労災
2006年 07月 08日
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指をミシンで縫ったことがある。
ブラのフロントホックを縫う工程をしていた時だ。
ブラのフロントホック縫いつけ、実はとても大変で難しい。
フロントホックはタブで縫い付けるのだが、針と布地の間は一針しか落としてはダメだとか、えーと……そうか、図ナシでは説明できん。
なので図を描いてくる。
描いてきた。
緑の部分がタブ。
赤い線がミシンで縫った場所。
青い部分に一針だけ針を落として、返し縫を三回繰り返す。緑の斜線部分は2mmにカットすると決まっていて、カットしてから失敗してることに気付いたりしたら、もう縫いなおせない。
そして正面から見たとき、緑のタブは一ミリたりとも見えたら致命不良になるのだ。
こんな神業を大体2~3秒で縫う。
人間にできる技か!ヽ( `Д´ )ノ と最初は思ったのだが、人間とは凄いもので、できるようになってしまうのだ。針が一針だけ落ちているかどうかも、何度も繰り返すうちに、驚異的な動体視力で分かるようになってしまう。
しかし、手が壊れる。
正面から見たときにタブが一ミリたりとも見えたら致命不良になるため、ギリギリと引っ張りながら縫うせいだ。
先輩方が次々と脱落して、酷い人は病院送り。とうとうぼーに順番が回ってきた。
タブを押さえる指と針との距離は1.5mmほど。
縫いそうである。
そしてお約束通り、親指を爪ごと縫った。
工業用の針は特殊加工がしてあり、布に優しい薬が塗ってある。
しかしそれは人間には優しくない。
破傷風防止のため、主任に連れられて、病院送りとなった。
病院に行ってレントゲンをとり、骨に異常がないことと、爪を剥がすまでもないことを確認した。
男性看護師が、「右肩を出してください」と言う。
……肩。
どうやって肩を出せばいいのだろう? 襟口から?
てか、指縫ったのに、肩を出す……。
イロイロ考えながら、どうやって肩を出すのか、何故肩を出すのか悩み、遠山の金さんみたいに襟口から肩を出そうと悪戦苦闘した。着物ではなく、Tシャツなのに。
そしたら男性看護師、ゲラゲラ笑う。
「なにやってんですか」
「え、だって、肩を出すようにって…」
「注射をするので腕を出してくれればいいんですよ」
なんだとてめえ! じゃあ最初から「注射するから腕出して」って言やあいいじゃねえか!Tシャツの襟口、ムダに広げちまっただろ! 注射するならするって、言え!
……とは後から思ったのだが、その時は「なに変なことやってんの」と笑われていたので、赤面してそんな考えまでは思い至らなかった。
確かにいくら肩を出せと言われても、普通は襟口からは出さないだろう。なんで襟口から肩を出そうと思ったのか、それは自分でも分からない。
その後、破傷風の注射が体に合わなかったらしく、一週間、腕が上がらなくなった。
工程から外され、落ち着くまで右腕を垂らしながら、先輩の手伝い。
先輩は、「最初の注射のとき、なんともなかったの?」と聞いてきた。
「最初? 最初も何も、ぶっつり一発で終わったけど」
「え、うそ。死んだりする人もいるから、最初はちょっとだけ注射して、拒絶反応とかでないか様子を見て、それから正式に注射する筈だよ、破傷風防止の注射は。私がそうだったもん」
「…………」
どこまでが本当の話か、素人のぼーには分からない。
しかしそれ以降、ミシンで手を縫っても、病院には二度と行かなかった。
ブラのフロントホックを縫う工程をしていた時だ。
ブラのフロントホック縫いつけ、実はとても大変で難しい。
フロントホックはタブで縫い付けるのだが、針と布地の間は一針しか落としてはダメだとか、えーと……そうか、図ナシでは説明できん。
なので図を描いてくる。
描いてきた。
緑の部分がタブ。
赤い線がミシンで縫った場所。
青い部分に一針だけ針を落として、返し縫を三回繰り返す。緑の斜線部分は2mmにカットすると決まっていて、カットしてから失敗してることに気付いたりしたら、もう縫いなおせない。
そして正面から見たとき、緑のタブは一ミリたりとも見えたら致命不良になるのだ。
こんな神業を大体2~3秒で縫う。
人間にできる技か!ヽ( `Д´ )ノ と最初は思ったのだが、人間とは凄いもので、できるようになってしまうのだ。針が一針だけ落ちているかどうかも、何度も繰り返すうちに、驚異的な動体視力で分かるようになってしまう。
しかし、手が壊れる。
正面から見たときにタブが一ミリたりとも見えたら致命不良になるため、ギリギリと引っ張りながら縫うせいだ。
先輩方が次々と脱落して、酷い人は病院送り。とうとうぼーに順番が回ってきた。
タブを押さえる指と針との距離は1.5mmほど。
縫いそうである。
そしてお約束通り、親指を爪ごと縫った。
工業用の針は特殊加工がしてあり、布に優しい薬が塗ってある。
しかしそれは人間には優しくない。
破傷風防止のため、主任に連れられて、病院送りとなった。
病院に行ってレントゲンをとり、骨に異常がないことと、爪を剥がすまでもないことを確認した。
男性看護師が、「右肩を出してください」と言う。
……肩。
どうやって肩を出せばいいのだろう? 襟口から?
てか、指縫ったのに、肩を出す……。
イロイロ考えながら、どうやって肩を出すのか、何故肩を出すのか悩み、遠山の金さんみたいに襟口から肩を出そうと悪戦苦闘した。着物ではなく、Tシャツなのに。
そしたら男性看護師、ゲラゲラ笑う。
「なにやってんですか」
「え、だって、肩を出すようにって…」
「注射をするので腕を出してくれればいいんですよ」
なんだとてめえ! じゃあ最初から「注射するから腕出して」って言やあいいじゃねえか!Tシャツの襟口、ムダに広げちまっただろ! 注射するならするって、言え!
……とは後から思ったのだが、その時は「なに変なことやってんの」と笑われていたので、赤面してそんな考えまでは思い至らなかった。
確かにいくら肩を出せと言われても、普通は襟口からは出さないだろう。なんで襟口から肩を出そうと思ったのか、それは自分でも分からない。
その後、破傷風の注射が体に合わなかったらしく、一週間、腕が上がらなくなった。
工程から外され、落ち着くまで右腕を垂らしながら、先輩の手伝い。
先輩は、「最初の注射のとき、なんともなかったの?」と聞いてきた。
「最初? 最初も何も、ぶっつり一発で終わったけど」
「え、うそ。死んだりする人もいるから、最初はちょっとだけ注射して、拒絶反応とかでないか様子を見て、それから正式に注射する筈だよ、破傷風防止の注射は。私がそうだったもん」
「…………」
どこまでが本当の話か、素人のぼーには分からない。
しかしそれ以降、ミシンで手を縫っても、病院には二度と行かなかった。
by voovo
| 2006-07-08 19:00
| 日記